日記
私は18年前のあの日から、ずっと日記をつけている。
今回、母が実家を出て行くにあたり、そしていつかあのことを一冊の本にしたいと思うようになり、実家に置いたままの当時からの日記の数々を、母が居る間に回収しようと思いたった。
私がどうしても手元に取り戻したいと思ったのは、特にあの当時の、彼の死から直後の3ヶ月間につけていた彼用と私用の2冊の日記だった。
青いミッフィーの表紙のB5サイズのノートをビニール製のカバーに入れて、他のものとは分けて仕舞っていた。はずだった。
そのノートには当時の私の感情や、実際の詳細な日々の動き(いつ彼の両親に初めて会いに行き、お通夜がいつで葬儀がいつ、初七日や四十九日にああしてこうして、いつ高槻警察署に証人として事情聴取に呼ばれたか、などの記録)が書かれているはずで、それらをもう一度読み返してみようと思った。
置いてきたのは実家の2階の、元私の部屋のクローゼットのはずだった。2階にあるもう一つの部屋を父が荒々しく使っているので、母はここ数年は全く2階に足を踏み入れていなかった。事情を説明し、ラインのビデオ通話をオンにした状態で、父の留守を確認して、母に2階に行ってもらう。ついでに私が置いてきた不要なものの最終処分をしてしまおうというのが、母の目論見でもあった。
母は、私にとって彼や彼の死や、彼の家族との思い出や、そして彼の母の死がどんな大きなものかを知っている。なので一生懸命、私の指示を聞きながら部屋のクローゼットや押し入れを探してくれた。
が、出てこない。
念のため2回ずつ、クローゼットと押し入れを入念に探してみても、あるはずのところにミッフィーのノートがない。
日記は出てきたのだけど。肝心な最初の3ヶ月の、最も記憶と感情がフレッシュな時の記録が出てこない。
マジかー。(遠い目)
なんでだー。(撃沈)
ウソだろー。(ぐるぐる目)
でも出てこない。
あれ。もしかして。私の保険・年金情報や印鑑と一緒に、重要書類一式として母に預けた袋の中に入ってるんじゃないか?
そう伝えると母は悲鳴をあげた。母にはその覚えがなく、これで見つからないと自分の責任では?と思い始めたからである。
一階におりて、今度は母がいつも書類を仕舞う押し入れを調べてもらう。でもやはり、そこにもミッフィーは見つからない。
この時点で母は泣きそうである。
いや、多分私のせいなんだけどね、見当たらないのは。
私は当時このミッフィーノートを、彼と私が一緒に存在した時間の証だと思い、とても大事にしていた。どこに行くにも持ち歩き、寝る時も枕の横に置いて寝た。
絶対自分で捨てるはずなどない、とてもとても大切にしていたものだった。
あれ、、、。もしかして、、、私、自分でこっちに持ってきて捨てたかも、、、。
こっちというのは、カナダである。
あれー、、。もしかしたら、、。
うーん、やっぱりそうかもなぁ、、、。
いつだったか、もう実家に暮らすために帰ることはないと思って、いつかの帰省の時に、自分の部屋の荷物の最終処分をしたような、、、。
その時に、大事にしていた思い出の服なども一斉に処分して、いつまでも昔の面影を引きずってはいけないと思って、でもこのミッフィーノートだけはカナダで新しく保管し直そうかとか考えて、持って帰って来たような、、、、、、、、、。
急いで母とのビデオ通話を終了し、カナダの自宅のクローゼットをひっくり返してみるが、見つからない。
持って来てるとするならここでしょ、という場所を念入りに探すけど、まさかのまさかで出てこない。
。。。。。
あ、、。何となく、捨てた気がする、、、。
人の断捨離精神というのは恐ろしいもので、必要なものから断ち切ろうとしがちである。(断捨離あるある)
もしかしたら、万が一、この先この家の中のどこかからひょっこりミッフィーが顔を出すかもしれないが、「もうないかもね。ハハハ。」と思っている。
その時は、その時だ。
日付や時間の細かい記録がないだけで、今私が覚えている感覚とそれ以外の目一杯の情報や感情や思い出が、少しどこかに消えただけだ。 (涙)
なぜ私が「昔の記録」を集めようと思ったかというと、旦那が次の作品を執筆し始めたからだ。夏前から始めていたが、その姿を横目に私は某憂チューブで好きなアニメを観漁っていた。旦那があまりにも真剣にノートをとりながら書いている姿を見て、「あ、私も作品に使えるノートがあるぞ?」と思ったのだ。
まぁ、結果的には紛失してますが。その時はそう思って、「ナイス、私。今のうちに確保じゃ」と思ったわけで。
私の作品は、果たして出来上がるのかどうかはわかりませんが、現在は旦那の作品が最終段階に入ったので、私はその文章のいろんなことの確認作業でお手伝い。
私はどちらかと言うと、自分で作るより、確認の方が向いてるよな、、。
少なくとも私の心には合っている、と思う。
そんなこんなで、衣替えの秋。家中ひっくり返して、また断捨離しましょうかね。
注:大事なものは、捨てない方が良いですよ。
と、ある日の猫。捨てませんけど、、、?